ブクブクとバスバブルを泡立たせたバスタブに、ルルーシュは膝を抱えて暖かなお湯の中に浸っている。
別にそう狭くもない浴室の、これまた無駄に広いバスタブの中。そんな事をする必要は無いのだが。
「…すごい良い匂い、だねルルーシュ?」
目の前でニッコリと笑う、己のパートナーが居るからだ。
「手、出して。今日の戦闘で、少しだけどぶつけたりしたでしょ?」
MHを降りた時、強張ったままの掌を見咎めていたのだろう。
ルルーシュは見つかった事に僅かに眉を顰めて、聞こえない程度に舌打ちした。
「可愛くないから舌打ちしない。」
そっと掌を掬い上げるように持ち上げて、スザクはルルーシュの掌を見詰めながらそう呟いた。
そして、ゆっくりと両手で掌を摩っていく。
指の先から手の甲を辿り、何度も擦ってから指の一本一本を指の腹で撫でていく。
節ばった指先が、自分の細く頼りない指を撫でていくのを見詰めながら、ルルーシュは静かに吐息を吐いた。
「……疲れた?」
スザクが顔を上げないままにそう問いかけてくる。
「そうだな…、まさかこんな事になるとは思っていなかったから。」
「それって、転んじゃったこと?それとも、始めから戦闘になるなんて思っていなかったって事?」
クスクスと笑い声を漏らしながらスザクが呟くその表情を、ジッと見詰めながらルルーシュは視線を伏せた。
「…どちらも、だな。まさか初陣があんな……になるとは思わなかったし。何より、着いて早々に戦闘に入るとも思ってなかったし。」
項垂れ、反省するかの様に押し黙ったルルーシュの姿に、スザクは掌を離すことなく下から顔を覗きこむ。
「初陣のことに関しては、全然オッケーだったと思うよ?それに、白星を挙げて家の名前を護りたいって言ったのはルルーシュだ。だから僕は、あの場で最適な相手を探した。居なかったら様子を見ることも出来ただろうけど……あんなに弱っちい騎士(嘘だけど)がいること事態が稀だから、ルルーシュが勝てる様に最善を尽くしたつもりだったけど。……ダメだった?」
僕のサポートは頼りなかった?
そう囁かれて、ルルーシュは慌てて視線をスザクへと向ける。
「そうじゃない…っ!そうじゃないぞスザク!」
そうじゃなくて。
言葉に詰まり、顔を歪めて泣き出しそうな表情を浮かべたルルーシュに。スザクはニッコリと笑うと先を促す様に首を傾げた。
「その……まさか、本当に。自分の騎士としての能力が………半端なく、無いとは思わなくて。」
申し訳ない気がするんだ、と。繋いだままの掌が、僅かに震える。
「…それって、僕に?」
更に首を傾げて聞き返すスザクに、ルルーシュは顔を上げることが出来ない。
「……当たり前、だろう。俺だって騎士の戦いがどんなものか見ていて知っている。けれど…俺の騎士としての才能は……皆無、だ。そんな俺がファティマを娶る事自体、分不相応なんだって、」
「思うんなら、この場で滅茶苦茶に犯すけど。」
「おも………ってえぇぇぇぇぇ!!」
思いの合間にサラリと告げられた言葉に、最期まで呟く事が出来ずにルルーシュは顔を青ざめさせて背中を後退させた。けれど繋がれた掌が、それを許さない。
「ちっ、違っっ!」
ブンブンと音がする位の勢いで首を振りながら、ルルーシュは身体を震わせる。
「違う?良かったぁ。」
ニコリと笑うその笑顔が、怖いとルルーシュは目尻に涙を浮かべた。
眼が笑っていないのだ。
ズイ、と身を寄せられるが逃げ場がない。
「僕のマスターは君だけだよ、僕のルルーシュ。」
耳元で囁かれて、肩を竦めるルルーシュの頬にスザクの吐息が掛かる。熱が篭るそれに気がつかないわけが無い。
「だからお願い、僕を選んで。僕だけ見て、僕だけ頼りにして、僕だけを必要として。」
頬に這わされた舌先が、ネットリと皮膚を辿っていく。
「っっ!!」
口角を舐め上げられて、ブルリと背筋を震わせるものが何なのか。ルルーシュは肩を竦めながら、襲い来るものを堪えようとする。
「君のサポートが出来るのは僕だけだし、他の子に譲るつもりなんて全くない。」
囁く声は甘いのに、そっと胸元に置かれた掌は声とは裏腹に皮膚の上を蠢いていく。
額を合わせて、瞬きする度に触れる睫毛が、どれほど近くに寄り添っているかを物語っていた。
鼻先が触れ合い皮膚を擽る。
「君を護れるのは僕だけ。君を勝たせられるのも僕だけ。君を満足させられるのも、君を幸せにさせられるのも、君を愛せるのも、僕だけだルルーシュ。」
そう囁いて、スザクは殊更ニッコリと笑みを浮かべた。
対してルルーシュは顔を真っ赤に染め上げていて、言葉も無いのだろう僅かに唇を戦慄かせるだけだ。
「だから僕だけを見つめて。他に眼もくれないで。僕のすることだけに集中して、僕だけを感じて僕だけを受け入れて?」
胸に添えられた掌が、撫で付ける様に動いたと同時に敏感な部分を指先で抓みあげる。
「っぁ、あ…」
途端、眦に涙を浮かべたルルーシュの表情に、満足気にスザクは唇を吊り上げ嗤った。
僅かに上がった顎に舌を這わせて舐め上げれば、ビクリと肩を揺らしてルルーシュは逃げようと背中をバスタブに付ける。
これ以上、逃げ場などないのに。腰が引けているルルーシュの身体を片腕で囲むと、スザクはグイと腰を引き寄せた。
「ぅわ…っっ」
密着する皮膚の温かさに、ルルーシュは思わず閉じていた瞳を開けて目の前で微笑むスザクに視線を向けた。
その笑みが、優しさだけで構成しているのであれば良かったのだが。
滲む欲求が瞳に現れていて、羞恥心が沸き起こりルルーシュは顔を歪めた。
「な…何でそうなんだ、お前は…。」
悔し紛れに呟けば、目の前でスザクはキョトンと瞳を丸くさせて呟く。
「そうって?」
ナニ?と首を傾げる仕種は、ルルーシュがどう思うのか分かっていての行動だ。
くそぅと、絆されていると自覚しながらルルーシュは零した。その間も、スザクの掌が皮膚を這いずり感覚が鋭敏になる。
これ以上ない程に躯は密着し、吐息が触れる程接近した唇から漏れる息には熱が篭っていて。
指先が胸を嬲り、ゾクゾクと躯が震えていくのをルルーシュは享受していくだけだ。
ギュウと力を込めて瞳を閉じたのを見て、スザクは舌先を伸ばしてこめかみを舐め上げる。
「可愛い、マスター。」
耳に直接囁かれて、ビクと躯を跳ね上げるルルーシュを。スザクは見えないのを良い事に口元を歪めて笑った。こんな反応を見れるのは自分だけだと。こんな反応を与えられるのは自分だけなのだと、確固とした愉悦をもって嗤う。
「…口、開けて?」
頑なに閉じられた唇を舌先で撫で付けて、スザクは頬に軽く啄む。力の込められた口端に解す様に舌を這わせ、僅かに緩んだ隙間に舌を差し込んだ。
「ふぁ…っ」
クチュリと水音が鳴り、唾液を絡ませた舌先がルルーシュの粘膜を弄っていく。何度も絡まり表面を擦られ、口腔内は既にスザクの舌で蹂躙されている。ルルーシュは、それでもその熱は決して自分を傷つけないのを知っていた。
「ンン…、」
だから、密着し押し付けられた胸板から感じるスザクの鼓動が速さを増していくのを感じ取って、煽られる。背筋がブルリと震え、吸い上げる唇が隙間なく重なり、互いの総てを飲み込もうとする。
「ハ…っん、んぅ…」
飲み下される唾液と共に、何もかもを吸い上げられる感覚。
上がる息を整えようにも、絶えず交わる唇はそれを許しはしない。
躯を這う掌の動きは、水の中の所為もあるのか酷く柔らかくて。ルルーシュは腰をもどかしげに動かし、スザクの背中へと縋る腕を回した。
軽く深く接吻を交わしながらスザクはその事に笑みを浮かべ、薄らと開いた瞳で、頬を染めウットリと快楽に身を委ねるルルーシュを間近に映す。
密着させた下肢の交わる場所で、互いが熱を持ち始めているのを感じながら、スザクはルルーシュに対して腰を擦り付け突き上げる様に刺激を与えた。
「っん、ん…っ」
ビクリと腰を跳ね上げてルルーシュは寄せていた躯を離し、同時に夢中で吸い上げていた唇が水音を立てて離れていく。開かれた唇の隙間から差し出されていた舌先が、粘液で繋がれるのが視界に映る。
息苦しさと快楽から息も絶え絶えにしているルルーシュの姿に、スザクは愉悦の笑みを浮かべながら唾液で濡れた己の唇を舐め付けた。グイグイと腰を押し付けて揺すり、ルルーシュの双丘を鷲掴み逃げないように押え付ける。
《続く》
きっとサイトに更新します。
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